興信所と探偵の違いとは?その成り立ちから業務内容までを解説
昭和から平成の中頃まで、調査を依頼する場合は、「興信所」と呼ばれる調査業者に依頼するのが一般的でした。しかし今では、いつの間にか「探偵」が調査業界で目立つようになっています。
探偵と興信所とは同じものなのでしょうか。それとも何か違いがあるのでしょうか。
その歴史的背景から現在の状況までを詳しく解説していきます。
興信所とは?
興信所という言葉は近年、あまり耳にしなくなりました。しかし、昭和から平成20年あたりまで、街頭広告などでもよく目にする馴染みの名称でした。
本来は、探偵と興信所と大手信用調査会社(○○リサーチや○○データバンクなど)を含めて調査業という総称があったのですが、その中でも興信所という名称が一般的に広く認知されていたのです。
昭和時代には婚約相手の身元調査、または企業の社員採用時の身元調査がよく行われていました。
そのような調査を請け負っていたのが興信所です。そのため「興信所」という言葉が現代よりも馴染んでいたとされています。
しかし、同じ時代に「探偵」と呼ばれる調査業も存在していました。当時の探偵は、興信所とは異なり少々裏社会的な職業だったようです。
興信所と探偵の違い
調査業の歴史の中で、興信所と探偵に違いがある時代がありました。その歴史については後で解説しますが、その名残が興信所と探偵のサービス内容の違いとして現代にも少し残っています。
過去の主力調査内容の違い
過去には、興信所の主力事業は婚約相手や新入社員の信用調査や身元調査でした。
それに対して探偵は行方調査や浮気調査を請け負っていました。
今では、興信所も探偵も同じような仕事をしていますので、はっきりとした違いはありません。しかし、得意とするものや主力としている調査として過去にあった違いが今でも影響を残してそれぞれのイメージとして根付いている可能性があります。
法律上の定義の違い
平成16年、警察庁は「興信所業者が講ずべき個人情報保護のための措置の特例に関する指針」と題された通達を出しました。その3年後の平成19年、「探偵業の業務の適正化に関する法律」が施行されました。
前者は「興信所業者」で、後者は「探偵業」となっています。このような法的または行政的扱いを見ると、興信所と探偵は別物とされているようです。
それら通達と法律の条文には、それぞれに業務内容が定義されており、その業務内容から興信所と探偵の違いは、「実地調査を行うかどうか」にあると考えられます。
つまり、探偵は尾行や張り込みなどの実地調査を行うものと定義づけられているのです。
歴史的背景の影響から興信所と探偵が区別されて来ましたが、現在では「○○興信所」という商号で営業している事業者でも探偵と同様の実地調査を業務として行っているため、呼び方は違っても同じ業種を指していると考えてよいでしょう。
呼び分けの経緯・歴史背景
明治時代には、警察官を探偵と呼ぶことがありました。そして明治20年以降、民間の探偵(私立探偵)が初めて登場。
昭和時代には私立探偵を指して探偵と呼称するようになります。
興信所という名称は、明治時代に銀行が取引をしていくうえで、取引相手がどれほど信用できるのかを知りたいという需要から、30行の銀行の協力を得て「商業興信所」が設立されたのが最初でした。興信所は大手企業として誕生したのです。
このように、全く違う発祥と経緯をたどった探偵と興信所ですが、昭和時代には、調査業というカテゴリーに分類されるようになってきます。そして、その調査業界内でランク分けのような区別がありました。
法改正による変化
興信所はもともと銀行の協力で設立されたもので、信用情報を提供する知的な業者で、「調査業」と言えば「興信所」というイメージでした。一方、探偵は人の秘密を探る影の仕事をする業者。裏社会的な調査業という区別があったわけです。
そして、その区別を裏付けるかのように、探偵は暴力団員が営んでいたり、恐喝やぼったくりが横行していた時代がありました。しかし、業界の健全化を目的として制定された探偵業法によって、その実態は大きく様変わりしていきます。
また、興信所にも変化があります。
企業の信用情報調査などは民間企業として大きく成長した大手の「○○データバンク」や「○○リサーチ」に独占されています。また、依頼の大半を占めていた「婚約者の身元調査や企業の採用時の身元調査」は、プライバシー保護の観点から大幅に減り、興信所は衰退し数を減らすこととなるのです。
一方で、健全化が進んだ探偵は浮気調査の需要が高まり、表舞台に出てくることとなります。
テレビドラマなどでも題材として取り上げられることが増え、今では調査業といえば、「興信所」よりも「探偵」という言葉の方が一般的なほどです。
さらに探偵業法の影響で、「○○探偵事務所」や「○○探偵社」という商号で営業する事業者が増え、過去の探偵のイメージは大きく変わりました。
まとめ
現代の探偵と興信所の違いに明確な定義は無いということがわかりました。
歴史的な、表社会、裏社会というイメージはほぼなくなり、同時に、興信所は信用調査、探偵は浮気調査や人探しという業界内の住み分けもなくなっています。したがって、明治時代から様々な違いがあった興信所と探偵ですが、今となっては同じ業種と言っても過言ではなく、はっきりと「ここが違う」と言えるものはありません。
「興信所」「探偵」ともに探偵業法に準拠した健全な調査を行うということに違いはないのです。