探偵がトラブルを防ぐために知っておきたい!契約と法律のこと
浮気調査や人探しなどのトラブルが抱えた依頼者のために、さまざまな調査を行う探偵は時に依頼者とトラブルになることがあります。そうしたトラブルは、悪評を呼び業績に悪影響を与える恐れがあります。
そこで今回は、探偵業を営む人がトラブルを防ぐために知っておきたい、契約書の作成で守らなければいけない義務、調査契約にかかわる法律、クーリングオフ制度などを解説していきます。
調査依頼を受けるときには必ず契約書が必要
探偵業者は、探偵業法の規定により依頼を受けるときには必ず契約書などの法定書面を依頼者に交付する、あるいは依頼者から交付を受けなければならないことが義務付けられています。
もし、探偵業者が法定書面を依頼者に交付してない、あるいは依頼者から法定書面の交付を受けていないときには、探偵業法違反としてペナルティが下されることになるので注意しなければいけません。
ここでは、契約時に必要となる契約書などの法定書面について解説をしていきます。
重要事項説明書(探偵業契約前書面)
探偵業者は契約を締結する前に、探偵業者は重要事項説明書を交付し記載していることを説明することが義務付けられています。
重要事項説明書に記載することは、
- 商号・名称・氏名・探偵業届出番号など探偵業者に関する情報
- 個人情報を保護する法律を遵守すること
- 提供する安定業務の内容
- 依頼者が支払う報酬の概算額と支払い時期
- 契約解除に関する事項
- 秘密保持を約束する
といったことです。
調査契約書(探偵業契約後書面)
探偵業者が重要事項説明書の説明を行い、依頼者に納得してもらえたら調査契約を交わします。契約締結が済んだら直ちに交付しなければいけない法定書面が、調査契約書です。
調査契約書の内容は、
- 探偵業者の情報や契約締結を担当した者の氏名と契約年月日
- 調査の内容、調査報告の方法と期限
- 報酬の金額と支払時期・方法
- 調査契約の解除に関する事柄
- 調査で作成・取得した史料の処分に関する定め
などです。
重要事項説明書と重なる部分も一部にはあります。そのため、依頼者が細部まで読まない可能性があるので、探偵業者は細部まで読んでもらうよう促しましょう。
調査目的確認書(誓約書)
調査目的確認書は、探偵業者が依頼者から交付を受けなければいけない法定書面です。探偵の調査は、やり方次第でストーカーなどの犯罪行為や調査対象者の権利を侵害する違法な差別的取扱いに用いられる可能性があります。
そのようなことを防ぐために、探偵業者は依頼者が調査結果を悪用しないという旨を認めた書面を受け取ってから調査を始めましょう。
契約にかかわる法律
探偵業法7条
探偵業法7条は、探偵業業者が書面の交付を受ける義務があることを規定しています。探偵業者は、依頼者と探偵業務を行う調査契約を締結するときに、契約に基づいて行った調査の結果を「犯罪行為」「違法な差別的扱い」「その他の行為」のために用いないという旨を書面に示してもらい、交付を受けなければいけません。
なお、法定書面の交付をするのが依頼者でも、義務を課されているのは探偵業者です。もし、この法律が遵守されなかった場合には、探偵業者に対して指示等の処分が下されます。
探偵業法8条の第2項
探偵業法8条の第2項では、探偵業者は依頼者と探偵業務を行う調査契約を締結したときに、ただちにその契約の内容を書面にしなければいけないということが規定されています。この法律に従って作成する調査契約書では、調査をどのように進めるのか、調査結果を報告する方法など事細かく記載しておくことになります。
報酬についても、具体的な金額を算出して記載しておくほうが良いのですが、調査次第で必要経費が変わる可能性があります。実際にかかった費用を追加請求する場合や、固定報酬ではなく成功報酬にしておくといった契約内容の場合は、可能性としてありえる最大限の総額や報酬の算出に使われる料金設定について記載しておく必要があります。
クーリングオフ制度について
クーリングオフが適用される場合
強引なセールスなどから消費者を守るために制定された制度が、クーリングオフ制度です。探偵業者を契約を締結した依頼者も、契約締結日を1日目として、8日間はクーリングオフ制度に基づく解約が可能です。
しかしながら、クーリングオフ制度が適用されるのは一定の条件を満たした場合に限られます。
その条件とは、
- 探偵業者の相談員が約束もなしに依頼者の家に赴いて契約を締結した場合
- 探偵業者の事務所以外で調査契約の締結をした場合
- 重要事項説明がされていない場合
- 調査契約書の不備あるいは書面の不交付のまま取引がなされた場合
です。探偵業者は調査依頼を受けた場合、該当する行動を取っていないのか常に確認しておきましょう。
具体的にクーリングオフが適用される状況を解説を交え、解説いたします。
探偵業者の相談員が約束もなしに依頼者の家に赴いて契約を締結した場合
探偵業者の相談員が約束もなしに依頼者の家に赴いて調査契約を締結した場合とは相談員が飛び込みのセールスのように家へ来たときのことです。これは、依頼されていない家に営業活動を行うことをしなければ心配はありません。
探偵業者の事務所以外で調査契約の締結をした場合
探偵業者の事務所以外で調査契約の締結をした場合とは、喫茶店やレストランで話をして調査契約をする時のことです。依頼者の家ではありませんが、訪問販売と同義だと見なされます。
原則として事務所で相談を受けるということを徹底すれば、この状況になることはないでしょう。
重要事項説明がされていない場合
重要事項説明書の内容を説明を行ったのかどうかは、極めてトラブルになりやすいことです。説明をしている音声や動画の証拠がないと、依頼者と水掛け論になってトラブルが長引く恐れがあります。
そういった事が起きないように、依頼者の承諾を受けてスマホやICレコーダーを用いて録音しておくと安心です。
調査契約書の不備あるいは書面の不交付のまま取引がなされた場合
その他迂闊にも調査契約書を交付し忘れてしまった場合、クーリングオフの起点となる日がありません。その場合は、あらためて調査契約書の交付をすることになり、交付した日が起点となります。
クーリングオフが適用されない場合
クーリングオフが適用されないのは、依頼者が自ら電話やメールで調査をして欲しいと探偵業者に連絡を入れて、事務所で調査契約を締結した場合です。
クーリングオフ制度は、訪問販売のように不意打ちで営業を受けて、よく考える時間をつくれないまま不本意な調査契約をしまった消費者を救済するためのものです。しかし、自らの意思で連絡をして事務所に赴いたのであれば、考えた上での行動ということでクーリングオフ制度は適用されなくなります。
自らの意思で連絡し事務所での契約を締結したのにもかからず、クーリングオフを求めてきた依頼者には、そのことを説明しましょう。
法律や制度の知識でトラブルを防ごう
探偵業者の依頼者は、さまざまな問題を抱えています。
調査依頼をしてきたとき、契約を締結するときに冷静な判断ができないこともあるでしょう。そんな依頼者が後になって、契約内容や調査の手法などに不満を抱き、解約を求めることもあります。
探偵業者が契約に関する法律や制度を理解しておけば、そんな依頼者の要求に対して毅然と対処することが可能となります。自身の身を守り、依頼者と探偵業者双方がストレスなく調査を終えられるよう知識を身に着けておきましょう。