探偵による尾行は犯罪に該当する?犯罪にならない理由をくわしく解説
尾行や張り込みを調査の過程で行う、探偵。
尾行を行う際には、調査対象者に近づくこと、場合によっては対象者の住まい近くを歩くことも。「探偵の尾行は迷惑防止条例やストーカー規制法などで定義されるつきまといに該当し、罪に問われるのでは?」と気になる場合もあるのではないでしょうか?
今回は探偵による尾行が、罪に問われる可能性があるのかを解説いたします。
探偵の調査は探偵業法により定義されている
探偵の尾行は探偵業法によって定義されており、生活の平穏を侵害してはならないことが決められています。また、探偵業法では迷惑防止条例やストーカー規制法をはじめとするほかの法令を侵害しないよう義務づけられています。
犯罪で定義されるつきまといは、相手に不安を覚えさせるような態様で、悪意をもって行われるものです。家の周辺を行動するという点は同じでも、探偵の尾行とつきまといでは、目的や手段が全く異なります。
条例や法律で見る、犯罪にはならない理由
探偵による尾行が迷惑防止条例違反(つきまとい行為)などの犯罪に該当しないことは、各法律にも明記されています。それぞれの条例や法律をもとに詳しく見ていきましょう。
探偵業法
探偵業法の2条には、探偵業務とはほかの人の依頼を受けて特定の人の所在や行動に関する情報を収集することを目的に調査を行うもので、その方法として聞き込みや尾行、張り込みといった手段を認めています。
「尾行」の定義は相手に気づかれないように、後をつけていくこと。後をつけて、その行動を監視することで、警察が容疑者の行動を監視する際にも用いられる手段です。
また「張り込み」とは見張りのためにある場所に待機して見張ること。張り込みは、尾行のように特定した人物の行動を追いかけるのではなく、その人物の生活圏である自宅や勤め先などに重点を置いて、行動を監視するものです。どちらも相手に気づかれないというのは必須の条件です。
一方、探偵業法6条では探偵業法によって他の法令で禁止または制限されることができるわけではないと明確に示しており、人の生活の平穏をおびやかすような行為や他人の権利利益を侵害する行為はしてはならないとしています。
また、探偵業を営む人は、業務で知り得た個人情報を漏えいしてはならないことも決められています。もし違法な手段を用いて調査を行った場合には、公安委員会が業者に対し措置を講じるよう命じますし、場合によっては営業停止の処分を命じられることもあります。
探偵業を営む場合は、営業所ごとに営業所がある地域を管轄する都道府県公安委員会(警察を管理する行政機関)に届け出をすることが義務づけられていて、廃業する際にも同様に届け出を行うことが義務づけられているのです。
また、探偵業法に違反し営業停止の処分を受けた場合には5年間は再登録が不可能となり、暴力団員などは、暴力団員をやめて一定の期間が経過しないと登録できないなど、厳格な決まりがあるのです。
迷惑防止条例
迷惑防止条例は各都道府県によって異なりますが、東京都迷惑防止条例ではつきまとい行為を「正当な理由なく、ねたみや恨みなどの悪意の感情を満たす目的で行うもの」と定義づけ、生活の自由や名誉などがおびやかされる行動を指します。
特定の人物の住居付近を行動するという点では、尾行とつきまといは似ているように見えますが、つきまといは相手に対し不安を与えているという点で、探偵業法に定めた「他人の依頼を受けて情報収集を行う目的」とは合致しません。
また、迷惑防止条例の定義するつきまとい行為は「不安を覚えさせるような行為」としていますが、探偵業法では聞き込み・尾行・張り込みを人の生活の平穏を侵害してはならないと定めています。この点でも、探偵が行う聞き込み・尾行・張り込みと迷惑防止条例違反に該当するつきまとい行為は全く違うものなのです。
ストーカー規制法
ストーカー規制法(ストーカー行為等の規制等に関する法律)に書かれているつきまとい行為とは、特定の人に対する恋愛感情や好意が満たされなかったことに対する恨みを充足させる目的で行うものとされています。
またストーカー規制法でいう「つきまとい」は待ち伏せをしたり、住居付近をみだりにうろついたりすることで、特定の人やその周囲の人に不安を覚えさせるような行為のことです。ストーカー規制法は、個人の身体・自由・名誉が侵害されるのを防ぐ目的で制定されたもので、2000年に起きた殺人事件がきっかけとなって制定された法律です。
ストーカー規制法に定められたつきまといとは異なり、調査が完了した段階で尾行や張り込みが終了する点でもストーカー規制法の対象とはなりません。
探偵の尾行は基本的には犯罪にはあたらない
結論から言うと、探偵による尾行は基本的に犯罪にはあたりません。
「探偵業の業務の適正化に関する法律(以下、探偵業法)」にも、探偵業務の中でも明確に定義づけられています。
探偵が行う尾行や張り込みは、相手に気づかれないように行うことが肝心です。
対象者に気づかれてしまうと調査が危うくなるだけでなく、違法となってしまう場合も。
違法な手段を用いた調査は探偵業者が処分を受けることがありますし、もちろん調査に使った手段が他の犯罪の構成要件に該当していれば行政罰に加えて刑事罰を受ける可能性もあるのです。
探偵業務を行う場合には法令を順守することが求められており、違法な手段を用いた調査や平穏を害する尾行・張り込みは犯罪に該当します。上記の法律や条例に基づいた調査を心掛けましょう。